無題1

深い意味は特に無いです。
世界観設定においていくだけのお話。

リオちゃん過去台詞集ですよ。
もうネタバレですけど、ここで出さないときっと意味が無い。

昔話。

もう、１００年も昔のお話。

数多くの戦争でもこの戦争における勇者と魔王は特筆すべき強さでした。
魔王ボアレスは持ちうる限り、あらゆる手段で人間を苦しめました。
勇者ルーグは、あらゆる場所で魔族を退け、希望をもたらしました。

戦争は５年もの間続きました。
贖罪のため、すべての血が流され、あらゆるものが傷つきました。
最後に、魔王は討たれましたが、勇者もまた倒れました。

犠牲者と戦果を加味すれば、勝利者は人間と言えたでしょう。
しかし、物語が定めた結果は、引き分けでした。

そう、戦争は、まだ終わってなどいないのです。
ボアレスの娘が魔王を引き継いだ事はそれを暗示しているのかもしれませんね。
魔族に残った禍根。
人に残された傷跡。

根付いたソレは、きっと彼女と、貴方達に関わってきているのでしょう。

――吟遊詩人ノアは語る。


～～～～～～

「私は、あなたに手を貸してあげられない。……ごめんなさい」
「いいんだ。こんな事に君を巻き込むわけにはいかない」
「……もう、手遅れだってわかってるのに。……あなたを、助けたいのに。ごめんね、弱くて、ごめん……なさい」
「父親の命を奪うなんて、誰だって出来ないよ。そんな事をさせてしまったら、僕は自分を許せなくなる。だからもう、震えたりなんてしないで。僕は死なない。君から家族を奪う物語なんて、これで終わりにするんだ。……二人で」
「わかった。私、待ってるから。帰ってきて、約束、叶えようね」
「帰ってくるよ、そして、みんなが笑える世界にしよう」

………

「世界に災いあれ。人間に呪いあれ。勇者に絶望あれ。……貴様ら人間を、俺は、憎む……苦しんで死に逝くが良いわ…」
「………」

「……ぁあ……。僕も、甘い、な……。　最期に　　　　これ　だもん　な　　戻らないと……　君は　泣き虫　　だから　」




……

「どうして……どうしてダメなの……。もう、傷は直したのに！血は、もう与えたのに！私は、風の神じゃなかったの？！どうして、どうして大事な人を、みんな、みんな失わなきゃいけないの？！誰か一人くらい、助けさせてくれたって、いいでしょ！」

……

「私、行くよ」
「まだ時期尚早だ。リフィスの魂はいつか必ず世界に戻るのだぞ。人の子に宿って、きっとお前の未来を掴んでくれる。……勝ち目は無いとわかっているのに、焦る必要は無いはずだ。……お前は、我の友人だ。失いたくない」
「あなたの言葉はとても嬉しいけど……。母さんが戻る時はわからないの。それまでに、きっとまた、戦争が起こる。もう、私は血を流す世界なんて見たくない。それにね」

「その子達は、同じ魂を持ってる。名前も知らない、私のきょうだい。……だから、そんな辛いこと、させたくなんて、ないよね」
「……お前がいなくなったら、お前の望みはかなわない。リフィスの約束も、エクリナの想いも、全部なくなる。だが、お前の決意もわかる。…だから。勝てとは言わん。だが死ぬな。敗北してもいい、這ってでもいい。惨めでもいい、どんな姿でも、我はお前を笑わない。帰って来い。必ずだ」

「……うん」

「ありがとう、ヴァル。私は帰ってくるよ。残されるのは、寂しいもんね……。それにね、私もやっと、一人だけだけど、助けられたから。きっと世界だって救えるはず。だから、ルーグと一緒に、ここで待ってて」
「……ああ」

「ふふ、いってきます」

……

雨が降っている。
傷からは容赦なく血が流れ、低温は静かに意識を奪おうとする。
ああ、もう立つ事さえも出来ないなんて。
進もうとして、空しく指先が水音を立てる。
でも、進まなくちゃ。

這いつくばっても、地面を舐めても、私は、死ねない。
翼が折れようとも、もう飛べなくても、私は、諦めない。
みんなが大好きだから、みんな笑える世界があるのなら
私の全部を裏切ったとしても、今この時が痛むとしても、私は、絶望なんてしないだろう。

大好きな世界に嫌われたっていい、
大好きな人々に嫌われたっていい、
大好きな、いつか出会うあの子達に嫌われたって、いい。

……それは、ちょっと辛いけど。
みんなが幸せを求められる世界のために、私は生きたかったから。


「……リオさま！」


ああ、そんな顔しないでよガント。見つけてくれたんだから、自分を責めるような顔、しなくていいんだよ。
君は私に救われたなんて思ってるだろうけど、救われたのは私のほうなんだから。
だから、生きる事をやめた私のために、そんな顔しなくたっていいんだよ。
誰も幸せにできない私を嫌ってくれて、いいんだから。
私なんかにとらわれたりしないで、
あなたらしく、生きて欲しいよ。
それが魔王になる前の
私からの最後の
お願い

……

10年前につづく。